庭的読書のすすめ①

藤田進(以下、進):えほんの党は、私を含めた5名の活動家からなる任意団体です。皆さんのユニークな活動はおいおい紹介していくことにして、今回はまず、大阪に住む松本さんと「庭的読書のすすめ」というテーマでお話しさせていただきます。私が数年前に「今こそ庭だ!」と言い出したところ、松本さんから「庭ってなんだ?!」と返ってきて、庭と絵本の関係がおもしろくなってきたんです。

松本崇史(以下、松):あっ、あの、私も話していい?私、絵本と本が大好きです。書庫には2000冊以上の蔵書があり、ほぼ毎日絵本をテーマにした講演会をしてました。でもね、絵本さえあれば満腹っていうんじゃないんです。つまりね、私にとって絵本は、今自分が興味があることをより楽しむための道具なの。絵本を楽しむための読書じゃないんですよ。生きることを楽しむための読書みたいな……。

:百科事典みたいなもの?

:そうね、絵本にこだわりすぎると大切なものを見失うことがあるから気を付けているけど、例えば、アニマシオン(※)では、そもそも本には百科事典的な要素があるっていう理念があって、幼い子向けには絵本、そして音楽やアート、自然、ダンスも含まれる。庭的にいうと、絵本って庭に咲いている草花とか昆虫とか、光とか雨とか、そういうもの全部なの。部屋にこもって文字を追うだけじゃない。

:森と庭の違いってわかります?森は人がいなくても森でいられるけど、庭には、そこにあるものを愛でる人間が必要なんです。松本さんが絵本を草花やそれを取り巻く環境に例えるのってまさに庭的。それに、百科事典的な絵本の位置付けっていうのはわかりやすいですよね。絵本ってそもそも人を含めたこの自然界が、作者の視点で編集されて切り取られているもので、まさに庭そのもの。

:思い切って、「絵本は庭だ!」って言っちゃいたいね。「庭的読書」ですな。要はね、庭にひとりでいればひとりで楽しむし、ふたりいればふたりで楽しむ。集団なら集団の楽しみ方がある。そこに多様な在り方で絵本があるってことを言いたいの。そろそろね、「読み聞かせ」とかいうところから離れる必要があるね、絵本は。(つづく)

※スペインのジャーナリスト、モンセラ・サルトが提唱するこどもたちと読書を楽しむための方法論。アニマ(魂・生命)を輝かせるという意味を持ち、読書への多様な道を提案している。
※この記事は庭しんぶん7号(2018年3月号)に掲載されたものです。

松本崇史(まつもとたかし)
鳴門教育大学で保育・絵本を学ぶ。絵本屋を経験し、その後、任天会の日野の森こども園にて園長を行い、ほとんど事務所におらず現場にいながら、こどもたちと遊びを謳歌している。現在、おおとりの森こども園園長。雑誌『げんき』にて「保育ってステキ」を連載中。
藤田進(ふじたすすむ)
好奇心や探究心をたっぷり使いながらこどもと日々を過ごせるように、そして、こどもとこの地球や社会をどのように分かち合うかを模索しながら、絵本やおもちゃの販売、庭しんぶんの発行、研修事業などを運営中。札幌第一こどものとも社代表。庭しんぶん編集長。3児の父。
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