えほん開拓史②

前回のあらすじ
えほんの党大阪支部の鈴木氏と「聞くことから始まらない絵本!?」というテーマで対談しています。絵本を楽しむ時に「聞くこと以外の入り口があるかも?」というのが前回までのお話。さて、今回は?

藤田進(以下、進):聞くっていうこと以外に「見る」っていうのも絵本の入り口ですよね。

鈴木健司(以下、鈴):「見ない」ことでも楽しめる絵本ってありますよね。『んぐまーま』(クレヨンハウス)とか『もこ もこもこ』(文研出版)とかは、音だけでもおもしろい。見ないのなら絵本いらないじゃん!と言われそうですが、全盲のこどもに読んだことがあります。だって見えなくても楽しいですし。

:全盲のこどもに絵本を読もうって思うのがびっくり!それらの絵本って直感的で身体性の高い絵本。見るとか聞くとかじゃなくて音を体で感じる絵本ですよね。耳から音として入ってくるけど、言葉を理解する必要のない絵本。

:そうなんです。絵本って「感じる」っていうことが大事じゃないかと。

:五感のどれを使うとかじゃなくて、体で感じるっていうことか。

:僕は絵本に合わせて身振りするんですけど、話している時はもっとしますね。絵本を介してこどもと対話する。絵本の世界を一緒に感じたい。だから下を向いているこどもがいたら、目の前まで行って読んだりしますし。

:う〜ん、それぞれが感じるっていうことだけじゃなくて、「共感」というのをものすごく大切にしているんだろうなぁ、鈴木さん。共感を生み出す空間を絵本でつくってる。だから読むとか聞くとか、そういうことに捉われていない。

:対話的、というか応答的に読んでますね。実際はドタバタしたりしていますけど。まぁ、よくいうと応答的かな……。ふだん見られないような姿をこどもから引き出せたりするとむちゃくちゃうれしい。

:例えば?

:ふだんは聞くのが難しいこどもが楽しんでくれたり、なかなか言葉が出なかった子がすごいしゃべり出したり、2年間笑ったことがなかった女の子が笑ったり。絵本っていろんなことができますよ。

:すごい!

:たぶん、これは周りのこどもとの共鳴っていうのが鍵だと思う。

:共感じゃなくて共鳴!! 一対一じゃなくて集団だから、こども同士のイメージが共鳴し合って、より響く。

:そう、ふだんカラオケで歌わない人がライブ会場ではつい歌っちゃうみたいな。(つづく)

※この記事は庭しんぶん11号(2018年7月号)に掲載されたものです。

鈴木健司(鈴木健司)
関西こどものとも社勤務。よみきかせボランティアサークル三丁目の鷹主宰。兵庫県伊丹市立図書館でよみきかせを学び、以来さまざまな現場で絵本のよみきかせを行う。2022年1月号こどものとも年少版『さんぽにいったバナナ』を福音館書店より出版。
藤田進(ふじたすすむ)
好奇心や探究心をたっぷり使いながらこどもと日々を過ごせるように、そして、こどもとこの地球や社会をどのように分かち合うかを模索しながら、絵本やおもちゃの販売、庭しんぶんの発行、研修事業などを運営中。札幌第一こどものとも社代表。庭しんぶん編集長。3児の父。
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