絵本のジャンルのひとつで「物語絵本」っていったりするんですけど、「絵本ってそもそも物語じゃないのか?」「なぜそんなふうに分類した?」と、ふと思ったので掘り下げてみたいと思います。お相手には、再び松本氏の登場です。
藤田進(以下、進):絵本のジャンルって、物語絵本、赤ちゃん絵本、乗り物絵本、科学絵本、ユーモア絵本などなど……いろいろありますよね。でも、テーマやスタイルだったり、読み手の対象だったりと結構ぐちゃぐちゃしてる。分類自体が混沌としてますよね。
松本崇史(以下、松):ジャンルは適当よね。五感とか季節とか、こどもの生活に合わせて分けられたらいいけどね。今回は「物語絵本の歴史」!これ、おもしろそうだなぁ。物語って人類の歴史や文化を継承するツールだよね。
進:お、いきなり深いところへ。そうそう、活字になる前には、神話とか昔話とか口承で伝わってきてるし、その期間のほうが人類の歴史としては長いですよね。
松:『マザネンダバ ー南アフリカ・お話のはじまりのお話ー』(福音館書店)とか見ても思うけど、口伝とか噂話が物語の始まりな気がする。
進:この世にお話がなかった頃にお話を探しにいくお話が『マザネンダバ』なんですが、それで対話できるマニア感がたまりませんね。
松:そこに印刷技術が加わって絵本という印刷物になっていくわけでしょ。そうすると、伝承の形や伝達のスピードも大きく変化していく。今じゃ紙もなくなって電子化されてますけど。
進:さてさて、物語絵本っていうと幼年童話の一歩手前みたいなイメージがあります。物語絵本→幼年童話→児童文学→文学みたいな流れを感じません?
松:そうだなぁ。なんとなく文学への脈絡の中にあるよね、物語絵本って。でも、絵本を文学の枠で捉えるんじゃなくて、絵本の役割ってところで考えたいね。そのほうがわかりやすいし。
進:こどもにとっての物語の役割。彼らは物語をどう楽しんでいるのか、受け取っているのか、みたいな視点ですな。そしてそれを読む大人にとっての役割みたいなことも含みますね。
松:これ、真面目に言葉で言うとつまんない表現しかできなさそう。こどもにとっての役割って何だろうね。う〜ん、「遊び」っていうのがしっくりくるけどね。感覚的には。(つづく)