物語えほんの歴史②

前回のあらすじ
絵本のジャンルって、物語絵本、赤ちゃん絵本、乗り物絵本、科学絵本、ユーモア絵本……とか、いろいろあるけど、分類自体が混沌としている。物語絵本の役割を探ってみます。

藤田進(以下、進):物語絵本っていいますけど、英語では訳せない気がするんです。そもそも絵本って物語が源流にあるし、絵本のジャンルに物語ってつくのはなんか変!

松本崇史(以下、松):絵本は"Picture book"っていうけど、物語絵本となると"Story telling"が一番しっくりくるよね。

:そうそう。昔話が口承で語り継がれてきているように、全人類共通の「物語る」という営みがあって、それが文字になったり絵がついたりしている気がする。だから元をたどると"Story telling"があるよね。

:だね。

:最近息子があふれるように一人でしゃべったり歌ったりしてるの。しかも意味不明な言葉の羅列で。なんか、言葉の渦みたいになってるんだよね。こどもにとって「物語る」って、遊びみたいにも見えるし、必要な言葉を探しているようにも見える。

:それわかるな。語ることは自分を探すことにつながる。言葉探しは自分探し。オノマトペとか、つたない有意語でも、何か探してる。

:物語に出会うっていうことは、こどもにとってどんな喜びなんだろうか?

:物語って、自分が出会っていない世界に出会う。そういう「出会い」なんじゃないかな。自分の知らない新しい出会いがあって、そこに友達を見つけて自分も見つける。それを繰り返す感覚。

:なるほどなぁ!シンプルだけど、そうだわ。

:こどもにとっては、新しい世界って自分の周りにある現実であり、ファンタジーだと思う。

:こどもの周りにある世界って、意識すると結構限定された生活圏なんですよね。物語はその中で大きな役割を担える。

:物語の役割は、出会いかな。新しい言葉や方言、見たことのない絵や表現、作者や読み手、海外や自国の文化や習慣、友達との共感や共鳴、いろんな人のいろんな世界観があって、その中に自分を見つけたりもする。(つづく)

※この記事は庭しんぶん14号(2018年10月号)に掲載されたものです。

松本崇史(まつもとたかし)
鳴門教育大学で保育・絵本を学ぶ。絵本屋を経験し、その後、任天会の日野の森こども園にて園長を行い、ほとんど事務所におらず現場にいながら、こどもたちと遊びを謳歌している。現在、おおとりの森こども園園長。雑誌『げんき』にて「保育ってステキ」を連載中。
藤田進(ふじたすすむ)
好奇心や探究心をたっぷり使いながらこどもと日々を過ごせるように、そして、こどもとこの地球や社会をどのように分かち合うかを模索しながら、絵本やおもちゃの販売、庭しんぶんの発行、研修事業などを運営中。札幌第一こどものとも社代表。庭しんぶん編集長。3児の父。
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