前回のあらすじ
絵本のジャンルって、物語絵本、赤ちゃん絵本、乗り物絵本、科学絵本、ユーモア絵本……とか、いろいろあるけど、分類自体が混沌としている。物語絵本の役割を探ってみます。
藤田進(以下、進):物語絵本っていいますけど、英語では訳せない気がするんです。そもそも絵本って物語が源流にあるし、絵本のジャンルに物語ってつくのはなんか変!
松本崇史(以下、松):絵本は"Picture book"っていうけど、物語絵本となると"Story telling"が一番しっくりくるよね。
進:そうそう。昔話が口承で語り継がれてきているように、全人類共通の「物語る」という営みがあって、それが文字になったり絵がついたりしている気がする。だから元をたどると"Story telling"があるよね。
松:だね。
進:最近息子があふれるように一人でしゃべったり歌ったりしてるの。しかも意味不明な言葉の羅列で。なんか、言葉の渦みたいになってるんだよね。こどもにとって「物語る」って、遊びみたいにも見えるし、必要な言葉を探しているようにも見える。
松:それわかるな。語ることは自分を探すことにつながる。言葉探しは自分探し。オノマトペとか、つたない有意語でも、何か探してる。
進:物語に出会うっていうことは、こどもにとってどんな喜びなんだろうか?
松:物語って、自分が出会っていない世界に出会う。そういう「出会い」なんじゃないかな。自分の知らない新しい出会いがあって、そこに友達を見つけて自分も見つける。それを繰り返す感覚。
進:なるほどなぁ!シンプルだけど、そうだわ。
松:こどもにとっては、新しい世界って自分の周りにある現実であり、ファンタジーだと思う。
進:こどもの周りにある世界って、意識すると結構限定された生活圏なんですよね。物語はその中で大きな役割を担える。
松:物語の役割は、出会いかな。新しい言葉や方言、見たことのない絵や表現、作者や読み手、海外や自国の文化や習慣、友達との共感や共鳴、いろんな人のいろんな世界観があって、その中に自分を見つけたりもする。(つづく)